育てるって・・・


 「ギターを育てる」という言葉をよく目にしますが、育つとはどういう事なのでしょう? 安物の機種であっても、育てれば、やがては新品の超高級品より、音量も、サスティーンも、 音色さえも、優る品物になる事なのでしょうか?

 楽器とは不思議なもので、製作者が作ろうと思ったものと、実際に出来上がった物が 必ずしも一致するとは限らないようです。金管楽器のように素材として安定したファクターで あっても、出来上がるまでどのような音になるか、見当は付いても一致しないものとか・・・・。
ましてやアコースティックギターのように、個々が違う材料で作られれば、同じ材質であっても その特性が微妙に違い、2つと同じ物はないのでバラツキがあるのは当然でしょうね。
大手メーカーのすごいところは、社内基準で定められてるであろう、その音色の範囲内に 収まるように、同じ型番の機種を量産することだと思います。

 そしてメーカーから出荷された機種は最終的にユーザーにわたり、元来から持っている 固体のポテンシャル(潜在能力)を最大限にまで引き出されるように調整され、弾き込まれる ことによって各所が馴染み、その固体なりに良い音が出るようになるのでしょう。 これを強いて名づければ、エージングとでも呼べば良いのでしょうか。
個々のポテンシャルが低ければそれまで!駄馬はサラブレッドと競争しても 勝てません。(~_~;) 潜在能力が高くなければ、いくら弾き込んでも限度があり、 固体としては名器とはならない!ということですよね。
その品物に対する所有者個人のこだわりや好みとは別として・・・・。

 では、この最大限の能力を発揮するまでって期間としてはどれくらいでしょう?
湿度や温度などの保存環境が充分によい状態で、 毎日3〜4時間弾かれてるとか、音楽が充満する環境下でボディが常時振動してれば 1年間くらいで変わってくるかもしれません、しかし、なかには10年くらい掛るものも あるのでしょうか?o(°°)o ?
中古で取り引きされる製造から10年以上経過した品物があって、音色、音量、サスティーンが その時点で好みでない物は、以後の進歩は期待できないと言えるのかもしれません。
ほとんど弾き込まれないような環境下にあったのなら別でしょうけどね。
また、弦をゆるめてケースにしまっておく期間は、ポテンシャルには影響しないけれど、 エージングとして考えた場合にはややマイナスになると思います。この期間が長いほど、 目覚めさせるまでに時間を要します。だから、ちょっと弾いて弦をゆるめてしまっておく では、まったくといっていいほどエージングにはならんでしょう。
しかしながら、コレクターとして扱うなら、これはこれでベストと思えます。(^^ゞ
 作る上で、固体のポテンシャルを高めるためには、まず材料の質ですね。
材料が良くなければ良い物は生まれません。ストラディバリが良いバイオリンを作ろうと 夢中になり、気が付いたら伐採道具をもって森の中をさ迷っていたという話は有名です。
まれに良い材料が使われてるにもかかわらず、たいしたこと無い楽器もありますが、 まだ化ける可能性があります。逆に、チープな材料で作られてるものは、材料以上の 能力を発揮する事は絶対にあり得ません。

 つまり、ギターの音が変わっていくということは、その固体の持つ最大の能力を発揮するまでの エージングであり、楽器そのものが持つ能力以上に「育つ」などとという事はない! 第一、ギターを製作された方に対して、ユーザーが「ギターを育てる」なんて、あまりにも おこがましいですよね!('〜`;)

2004.5.19 記


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