順反りと金属ロッド
鉄弦を使用するアコースティックギター、ナイロン弦のそれとは大きく
違うのが弦の張力です。
レギュラーチューニングした場合、ライトゲージで70Kg程度、
ミディアムゲージでは80Kg程度、12弦ではライトゲージでも
100kgのテンションがネックに掛かります。
鉄弦用ギターの場合、金属製のロッドが指板の下のネック内に
埋め込まれていて、このテンションが掛かってもネックが反らない
ように出来ています。金属ロッドの入っていないナイロン弦のギターに
鉄弦を正規のチューニングで張ると、ネックが反って壊れます。(~_~;)
と、ここまでは御存知の方も多いのでしょうけど、ロッドについて、物理的な
強度等を含めて詳しく御存知の方は意外と少ないように思われます。
よく言われるのが、「弦を長期間張っておくと、ロッドにも金属疲労が溜まって・・・」
とか、「弦を緩めたり張ったりすると、都度ロッドが動くので金属疲労が
・・・」とか聞きますが、はっきり申し上げまして、金属疲労が溜まるほど、
ロッドは弦に対して弱くありません。
Tバーであっても、SQロッドであっても、AJロッドであっても、弦の張力が
100Kg掛かっていたとしても、その変形は金属の弾性変形の範囲内であり、
金属疲労が蓄積する塑性変形にまでは至っておりません。
また、弦を緩めたり張ったりしても、その頻度は極わずかであり、疲労が蓄積
されるような振動的な力の掛かり方や変化ではありません。
よって、弦を張ることにより、極わずかに弾性変形することはありますが、
それ以上進むことも金属疲労から壊れることもないのです。
ではネックは何故反るのか?
すべて木材の狂いによるものです。十分に乾燥が施された柾目の材料と、
高度な加工精度があれば、ネックは「一定」以上反る事はありません。
この場合の「一定」とは、弦を張ったときの軽い順反りでリリーフと呼ばれ、
フレット式の楽器ではなくてはならない正規の反りのことです。
しかしながら木材である以上、乾燥度合いや経年変化による収縮など
読みきれない部分もあるために、長い間にはロッドを固定する部分に
ガタが生じたりして、その変形分だけ反りが進む事があるのです。
もちろん、使用環境によるところも大です。
接着剤が緩むほど高音の状態で保管されたり、湿度が高かったりすれば
木材ですから当然影響を受けます。
ヘビーゲージを張りっぱなしではロッドは大丈夫でも、それを支える木の
狂いも大きいものになるでしょう。もっともこの場合、ネックの元起きやボディの
ふくらみなどの症状の方が先に出る確立が高いですけど・・・。(>_<)
乾燥不十分や素材の不良、加工精度の悪さなど元々の出来の悪い場合は別として、
ネックが反ってしまうと、AJロッドなら比較的容易に矯正できますが、
TバーやSQロッドでは修理はちょっと大変。(´ヘ`;)ハァ
まあ、その辺は・・・・
『29. ロッドもいろいろ 2004/7/22 』
を御参照ください。(~-~;)ヾ(-_-;)オイオイ
この表題の行き着くところとして、使用後に弦を緩めるかどうかがありますが、
この議論は尽きる事は無いと思います。
御自身の主観をどちらに置くかで替わってしまいますから・・・。
『1. 弦はゆるめないぞ! 2004/5/14 』にもありますように、
自分はライトゲージで、環境条件が悪くなければ緩めない派ですが、
緩める場合でもベロンベロンまでは緩めません。
本来、環境がよければネックは反らないはずですから、ほんの少しだけ
サポートとして1音も緩めれば十分じゃないかと思ってます。
もしそれで故障が起こるようなギターなら、最初から出来が悪いんですよ!ヾ(-
-;)コラコラ
その方が、ナットやペグの消耗も押さえられますし、音が安定するまでの
時間も少なくてすみます。木材としても一方向にだけ力が掛かっている方が、
力の変化が少なくて良いんじゃないかな?
2005.9.13 記
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