物理的考察


 弦楽器と呼ばれる物の中で、弦を張っておいて壊れる心配をするのは スチール弦用のアコースティック・ギターくらいでしょうか?
同じようにスチール弦を張ってあるピアノ、全部で72鍵盤もあり、 太い方は1音あたり3本も弦が張ってありますが、 弾かないときに緩めるものでもありません、張りっぱなしですが、 それで壊れたという話は聞きません。(^^ゞ
そもそもスチール弦のギターだけが何故壊れる(故障を起こす)のか?

 スチール弦をレギュラーで張った場合、ライトゲージの場合でその張力は 約70〜75Kgになります。内部に補強ロッドの入っていないクラシック・ギター のネックにこの張力を掛けると、あの太いネックであっても時間経過と共に変形し、 弦を緩めても元にもどらなくなることもあります。(>_<)
補強ロッドの入ってるスチール弦用のギターにライトゲージを張っても、 当然このような異常は発生することなく、比較するとはるかに細いネックで あっても使用に耐えますので、その差はネックの太さに関係なく、補強ロッドの 有無によるところが大きいと言えます。
つまり、木材の強度だけではスチール弦の張力にはまったく耐えられませんが、 金属ロッドと木材ネックの組み合わせで強大な張力に耐えてることになります。 φ(・_・") カキカキ

 張力が70Kg云々といっても、これが全てネックを曲げる方向に働く力という訳ではなく、 ほとんどが指板に圧縮を掛ける方向に働き、そこを支点としてネックの背面に伸びの 力が掛かり、木材が変形した結果としてネックが反るわけで、ネック背面の伸びを 抑えようと、そのサポートとして金属ロッドが入っているのが通常のAJロッドかと 思います。
比較するとSQロッドやTバーロッドは、それ自身で曲げを防いでるような、等価的に 固い指板材料をより厚くしているようなで、曲げの力に金属素材の強度で対抗する 意味合いで入ってる感じを受けます。
いずれにせよ、指板がある程度の圧縮圧力に耐えられるような固い材でないと お話しにはならないのでしょうけどね・・・・?(^^ゞ
ですから指板を削っちゃうような修理は絶対にNGな訳です。

 ボディの方ですが、シーズニングによる乾燥が十分であるならば木材の 経年変化による変形は少なく、大きな不具合も起こりにくいのでしょうけど、 木材である以上変形はゼロには抑えられませんので、長い年月の間には 多少の修理は出て来るかと思います。
管理条件として、気温が20度前後であり、湿度が50%前後をキープできるなら、 問題はないのですが、実際はそうも言っていられません。
高温多湿になれば木材は変形し接着部も剥がれます、逆に乾燥しすぎでは あちこちが縮んだり、場合よってはクラックが生じます。
私見として、ある程度管理がまともなら、ライトゲージを張りっぱなしであっても、 壊れるものではないと思ってます。もしそれで壊れるなら、シーズニングが不十分で 変形を生じたためか、最初から欠陥を持っていて、遅かれ早かれ弦を緩めていても 不具合は出て来るのでしょう。
あるいは、所有者ご本人の自覚が足りないだけで、実際には保存環境が悪くて 故障が起きてるのかもしれません。(~-~;)ヾ(-_-;) オイオイ

 スチール弦用のギターといえど、一般的にはライトゲージ程度のテンションでは 張りっぱなしでも『壊れない』ように出来ている。しかし、保存環境によって、その強度の 限度は変化し、ちょっとした事で『壊れる』に変化する。このように考えてはいかがでしょうか?
けして弦はべろんべろんになるまで緩めて保管する必要は無いと断言します。ヾ(°∇°*) オイオイ
 べろんべろんになるまで弦を緩めて保管しなければならないようなアコースティックギターなら、 普通に弦を張っただけで壊れます!( ̄Λ ̄)ゞ んむっ

2006.4.19 記


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