オーディオと楽器


 どちらも音楽というキーワードの元、お互いに関連性のある重要なファクター であると思いますが、それぞれについてバランス感覚よく心得てる人って 意外と少ないんですよね。
何十万円もするような高価なギターを何本も持っていながら、音楽は ミニコンポやパソコンでしか聴かない人とか、とあるギタリストにおいては、 自分のCDの音質調整は、ミニコンポやカーコンポに合わせてあるとまで 言い出したり・・・(~_~;)
またその反対で、何百万も掛けたオーディオ装置をお持ちでありながら、 楽器の音の優劣はまったくわからないとおしゃる方もいらっしゃいます。

 先日、トミー・エマニュエルさんの日本公演を聴く機会があり、オープニング・ アクトと称して何組かの方の演奏、好むと好まざるとに関係なく聴かせて いただきましたが、ライブ会場で奏でたその『音』はあまりにも酷い!
会場は日本有数の音響設備を誇るライブハウスで、当然ながら主賓である トミー・エマニュエルさんの『音』は文句のつけようも無く素晴らしかったの ですが、同じSRシステムを使いながら、オープニングアクトを務めた方達の 『音』は・・・・・Y(>_<、)Y Y(>_<、)Y Y(>_<、)Y

 当然、トミーさまと前座では演奏技術も雲泥の差がありますが、それ以前に 出て来る『音』に対しての考え方が全然違うようです。
オープニング・アクトの方達は、『演奏』しか考えていません。これに対して トミーさまは、来ていただいた観客に、いかに良い音で聴いてもらえるかを 考えてのプロデュースをしてるようです。もちろん専属ミキサーの方も おられましたし、ピックアップ関連の使用機材も桁違いですが、ちゃんと聴く 側のことも考慮に入れていたのは確かでしょう。

 生音ではなく、ピックアップを使って、SRを通してギター演奏を伝える 訳ですから、音について、オーディオ的にそれなりのコントロールが なされてないと、雑音でしかありません。
運指でキュッキュッキュッキュと音楽以上に余計な音を 出したり、消音の無い、ピアノで言えばペダル踏みっぱなし状態でワンワンと 際限なくコード音を響かせたりされたのでは、SRシステムのパワーが 大きいだけに、聴いてる方は苦痛でしかないのです。

 楽器だけにこだわる人には、スピーカーの置き方で音が大きく変わることも ご存知ない方がいらしゃいました。そんなことさえも知らずにピックアップに あれこれこだわっても、ラインでつないだところでロクな音は出てきません。
やはり楽器の性能や音色を知った上で、オーディオについてもある程度の 知識や認識が無いと、まともな音は出せないのです。
ましてや、生音だけではなく、ピックアップなどを使ってSRシステムで 拡声するライブを行う場合には・・・・・。

 演奏家が、スタインウェイのフルコンサートグランドで演奏したピアノ音楽も、 ミニコンポで聴いたのではその魅力は皆無に等しくなってしまいます。
ミニコンポで聴くレベルのピアノなら、電子ピアノでも充分ですが、 高級オーディオシステムで聴いていながら、その差がわからないのも また悲しいものがあります。

 良い楽器で演奏された、魂のこもった演奏を、ハイレベルなオーディオ装置で 聴くってのも最高です。
しかしながら、勘違いしてはいけないのは、どんなハイクラスのオーディオ であろうとも 、原音をそっくりそのまま再生するものではないのです。
原理的に、どうあがいても、原音そのままの再生はできるはずがありません。
楽器の音一つにしろ、スピーカーから再生されたその音は、生の楽器の音とは 大きく異なり、それらしく聴かせる類似品の音でしかないのです。
そして、それらしく加工された音の集まりである音楽ソースを、仮想のS席で聴くための ものがオーディオシステムなのです。
音の加工の仕方、再生の仕方によっては、生の楽器演奏を会場で聴くより、 遥かに心地良く、魅力的に響く場合もあります。
そのような、魅力的な音を少しでも聴きたくて、高いお金を払って ハイレベルなオーディオシステムを購入していきます。
残念ながら、ミニコンポ等では、この魅力は絶対に再現できません。
故に、ミニコンポ等で満足されてる方には、絶対にわからない世界でもあるのでしょう。


2007.8.23 記


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