レコード盤との相性?
DL−103というDENONのカートリッジ(レコード針)をかれこれ30年愛用しています。
日本の放送局用に開発された国産のMCカートリッジで、現在もまだ市販で供給が続いている
超ロングセラーの名器とも呼べるカートリッジです。
そしてなによりも価格が安いのがありがたいですね、発売当初の価格が¥19000、現在の価格が
税込みで¥26000、針交換扱いなら¥16900の定価です。
オルトフォンの中核機種シリーズ、MC−10Wが¥54600、MC-20Wが¥75600、MC-30Wが¥94500、
針交換でもそれぞれで¥32500、¥45150、56700と比較しても相当にお得でしょう。
価格ほどの差があるとは思えませんもの。
家計にもやさしいDL−103です!
先日、某SNSのコミュニティの中で『盤を選ぶDL-103』という表現があって、それを目にしたときに、
本当にそんなことがあるのだろうかと疑問を感じました。
元来、DENON DL−103 というカートリッジ(レコード針)は、NHKが放送局でのリファレンス用にと、
レコード全盛時代にオーディオメーカーと共同開発した製品であり、日本の放送局用としての『標準』とも
呼べる製品です。
そんな品物が『盤を選ぶ』などということが有るでしょうか?
『盤を選ぶDL-103』と書き込んだ方がおっしゃるには、盤によって歪を感じるとか、そのようなデーターがあって、
他のカートリッジに替えて聴取すれば、それはなくなるので、問題はレコード盤ではなく、DL−103側に
あるとの主旨。
しかもその原因は、針先が丸針であり、楕円針よりは劣るトレース能力にあると主張されてるように感じられました。
そもそも、放送局ご用達のカートリッジ(レコード針)において、レコード盤を選んだら、使い物にならんでしょうけど・・・?
少なくても我が家のレコード再生装置に使用して約30年が経過してますが、未だかつてそのような問題に接したことは
ございませんので、なんでそうなったのか、原因についてあれこれ考察してみました。
以下はより一層の専門用語が並んで理解しずらいかもしれませんが、それなりの経験値を持つオーディオマニア&
電気屋として記載しておきましょう。
カートリッジ自体が歪を発生する要素は3系統考えられます。
◆1.使用上における機械的要因
◆2.使用上における電気信号的要因
◆3.使用環境における外的外乱要因
まずは◆1.ですが、DL−103は針圧2.5gと通常のMM型と比較して高めであり、その質量やローコンプライアンス
特性を活かしきるアーム等を採用された上での検証なのかどうかです。
オルトフォンやイケダ製、SMEの3012Rなどの、リファレンス的なトーンアームを十分に調整の上使用され、ターンテーブルも
リファレンスに値する製品を使用されてのモニター結果なら良いのですが、市販の量産品的なレコードプレーヤーにおける、
ユニバーサルアームでのシェルごとの交換による検証では、その機器の性能的な問題の方が大きく関与してきます。
DL−103の性能を100%発揮できるだけのレコードプレーヤーシステムで、聴取されてるかですね。
◆2.においては、その電気的な特性から、受ける側のフォノイコライザーの性能、入力インピーダンス等の不整合に
おいても、歪が発生する可能性は否めません。
電気的なマッチングが十分に取れてる増幅機器と接続されてるかは前提条件であり、もしそうでなくて、他のカートリッジと
比較検討を行う場合なら、◆1.と関連しますが、同じ質量程度の、同じような出力特性、同等の
インピーダンス特性であって、同じようなコンプライアンス特性をもつ製品と、そっくり置き換えない限り、片手落ちの
比較結果でしかないでしょう。
◆3.におきましては、ターンテーブルがダイレクトドライブ方式である場合、そのリーケージフラックスによる影響を
受ける要素も大きく、感度の高いMCカートリッジでは特に関与が大きいでしょう。
これらの条件がすべて満足できてない限り、カートリッジを交換したからOKになったとはいえ、DL−103に問題があるとは、
単純に言い切れるものでもないと考えられます。
そもそもトレーシング能力が悪くて、盤によって歪みを発生するような製品があるとしたら、それは根本的に不良品であり、
放送局で業務用として使用するはるか以前のB級粗悪品です。
一定水準以上の品質を持つ製品であるなら、カートリッジ自体には音色や音のバランスの違いこそあれ、
正しい使い方で安易に歪が出る要素は在り得ません。
2010.12.9 記
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