刷り込まれた認識


 自分が高校生であった1970年代の初頭は、フォークブームでした。
街の中に何軒かあるレコード屋さんでも鉄弦のギターを取り扱っていて、 ¥10000前後から¥70000程度の機種が、値段別にズラリと並べて 置いてありました。
ヤマハ、モーリス、モラレス、プロ・マーチン、ジャンボなんてメーカー品が 一般的だったでしょうか、Sヤイリとか、Kヤイリとか、ヤマキなんて ブランドが置いてあるのは都内だけで、田舎にはまったく見あたりません、 MartinとかGibsonなんてのが、仰々しくガラスケースの中に 陳列されたのは70年代の中頃以降のお話です。

 そんなレコード店の一角に並べてあったフォークギター、安い方から 高い方へ移るに従って、外観のグレードが上がって行くのがよく分かり ました。
まずはギターの顔とも言えるヘッド、安いものは文字だけのステッカー シールが貼ってあるだけですが、高くなると貝殻細工でブランド名やマークが 掘り込まれてます。チューニングに使う糸巻:ペグも、安価なものは 後ろから見てギヤが丸出しの如何にも安物で、その構造が一目で 解ったりしますが、値段がちょっと上がると、そこにカバーが付いた 製品になってきて、¥50000以上ではロトマチックと呼ばれる、 グリース内蔵方式で、ノブのセンターにネジが加工された高精度の 高級品が取り付けられてました。
指板にあるポジションマーク、これも値段に伴い豪華になっていきます。
安いものはドットと呼ばれる丸だけのもの、しかも12フレットだけ2個で、 5、7、9、フレットに各1個だけ。値段がちょっと上がると、7フレットに 2個となり、高くなるに連れ、手の込んだデザインが工夫されたり、貝殻が 豊富に使われた、キンキラした仕上になっていったりしてました。
一番わかりやすかったのはネックやボディ周辺のバインディングでしょうか。
安い製品には白いバインディングなんて無くて、ボディの周辺も黒い 仕上がり、次にボディだけ白いバインディングが施され、より高価に なるとネックの側面だけ白い淵が着いてきます。さらに高価になると、 ヘッドの周囲まで白く巻かれて、バインディングとボディの間にも 何かしらのデザインされた模様が入ってきます。10万円以上の品に なれば貝殻まで使われて来るのでしょうけど、田舎町ではそこまでの 製品は置いてありません。

 そんな具合で値段相応の変化を刷り込まれた高校生には、高級なギター とは、ボディやネックに白いバインディングがあって、手の込んだ ポジションマークを有してて、ロトマチックのペグが付いてるのが、 高価であり、良いものであると思い込んでました。
なので・・・・、Martinの18系のギターは、どうしても 3万円台に思えてしまうのです。特に最近ではウェバリーのオープン バックペグなど、ロトマチックより精度の良い高級品も出回ってますが、 ウェバリーを付けた OMC−18VLJ なんて、ポジションマークも 全部で3個しかないし、当時の自分が見たら¥18000だと 思っちゃうでしょうね。
ましてや、中古のボロボロだったら・・・・、どこの奥さまにも スタイル18系のギターは絶対に高いものに見えないでしょう、前様には 別ですけど!


2013.1.5 記


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