張りっぱなしだけど


 我家のギター達は基本的に弦を緩めません。
例えばD−45GEにしろ、2002年の4月12日に到着してから今日まで、 ライトゲージをレギュラーで張ったままです。
1ヶ月に1回くらいしか弾いてない機種であろうが、12弦であろうが、張りっぱなし のまま壁からぶら下がってます。
この件ににつきましては↓以前のコラム

◆弦はゆるめないぞ!

◆順反りと金属ロッド

◆湿度変化は強いぞ

◆物理的考察

◆張りっぱなし

 あれこれと好き勝手を書いてありますので、時間のある方はご覧下さい。(^^ゞ

 で、なぜまたこの話題を書いてるかと申しますと、某大手掲示板で、 弦を張りっぱなしにしていて、トップのふくらみとサウンドの関係が どうのこうのと話題になってましたので、触発されていつもながらの 私見を徒然なるままに・・・・。(^_-)
最近は恐くて書き込めないしね・・・・(~-~;)ヾ(-_-;) オイオイ
 まずトップの強度についてですが・・・・・
弦楽器の中で弦を緩めることが話題になるのは、鉄弦のフラットトップギター だけでしょう。他の楽器は、使ってないときも緩めませんよね?(・_・?) ン?
物理的に考えますと、約70Kg以上の弦のテンションが、ギターのトップから サドルの頂点までを半径Rと角度θの積:R×θで表した『距離』に、曲げモーメントの 力としてトップ面を持ち上げる方向に作用してますが、半径Rの力学的支点は 組立構造により角度θが小さくなるように創作上工夫されており、一点として絞り込めば、 ボディのネック側の頂点、14フレットの機種であれば、14フレットのボディ位置に あたります。
クレーン車でブームの角度を上げて、荷を吊ってるような状態ですね。(-_-)ゞ゛ウーム
当然ながら半径Rには圧縮方向の力が加わり、それに耐えなければなりませんが、 家の柱材などと同じ方向に加わる力ですので、トップ材は木材としてその木目方向からも 充分に耐えると考えられます。
弦の張力のほとんどは、この圧縮方向の力で受けることになります。
そして残りの、(仮にθを大きく5度、弦長を640ミリメートルの機種と仮定した場合でも) おそらく2Kg以下の力がトップを持ち上げる方向に作用しますので、これをブリッジ プレートで面受けしたり、ブレイシングで分散させたりして、一点に力が集中しない ように受けてるのです。(^。^;) フウ

 重要なポイントは、弾性変形の間であれば問題は無く、塑性変形まで行ってしまうと マズイということであり、推奨指定の弦を張った時に、弾性変形から塑性変形に至るまでの 安全率を1+αで考えれば、アルファが大き過ぎればオーバービルドであり、αが 小さかったり、ゼロやマイナスだったら強度不足の品と言えるのです。

 また、あくまでも木材ですから、力学以外にも湿度や温度の影響設けやすく、 素材の乾燥が不十分であればさらに変化や変形することもあります。
ですから・・・、そこまでを見越して、メーカーとしては温度管理、湿度管理を細かく 指定してくるのでしょう。

 この他に、音質面への工夫から、強度面と天秤に掛けて施工する事もあるでしょうから、 常に表面が平らのままであることはないでしょう。
もちろん、湿度の増減によって膨らんだり、下がったりする事は起り得ますから、 トップのふくらみが進行することなく、ある程度で止まって、弾性変形の範囲内であれば OKであること、これがわかっていれば大丈夫かと思います。
限度を超える変形があると、ブレイシングが剥がれたりしてるんですよね。
ただこれはある意味、電気回路の保護ヒューズが切れるようなものでもあります。


2008.3.5 記


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